こんにちは。京都のエール神経リハビリセンター、作業療法士の里見です。
本日は「歩行形態の変化・足(全身)の機能を取り戻す方法」についてお話していきます。
事前に読んでおきたいコラム
歩行形態の変化について
日本人の歩行形態の歴史
江戸末期頃までの日本人の歩行形態は非常に多様であり、職業や身分、性別によって特徴的な歩き方が存在していました。例えば、以下のような歩き方が挙げられます:
- すり足歩行:腰を少し落として歩く。
- 大工や鳶職の歩き方:腰高で足を交差させるように進む。
- 若い娘の内股歩き。
- 年増の女性の練り歩き。
これらの歩き方は、日本舞踊にも見られるように、当時の社会的な「らしさ」を表現していました。しかし、現代ではこうした社会的な違いはほとんど見られなくなっています。
日本の伝統的履物と歩行特性
明治40年代以降、日本人が靴を履く習慣を持つようになるまでは、草履・草鞋・下駄などの伝統的な履物が一般的でした。これらの履物は、以下のような歩行特性を生み出しました:
- 足先の親指に力を入れる歩行:履物を足の先で引っ掛けるようにして進む。
- つま先への荷重:下駄や草履では踵が地面に接地しないため、つま先に重心をかける歩行が基本となる。
- 足趾の屈曲(底屈):鼻緒を親指と第二趾で挟む動作や、足趾部分に台座がない構造により、足趾を屈曲させる動きが強調される。
これらの歩行特性は、単に身体の動きに影響を与えるだけでなく、日本人の優れた身体操作法や動作性の基礎となっていたと考えられます。
日本人の歩行形態は、時代や生活様式の変化とともに大きく変わってきました。特に、伝統的な履物から現代の靴への移行は、歩行スタイルや身体の使い方に大きな影響を与えています。しかし、こうした変化の中で失われた身体の機能や動作特性を見直すことは、健康的な身体作りにおいて重要です。その鍵となるのが、日本人の身体動作の基礎とされる「ナンバ(原初生産性)」の考え方です。
ナンバ(原初生産性)について
ナンバの概念
「ナンバ」とは、日本人の歩行形態や身体動作の基礎となる概念であり、武智による「武智論」では、日本人が農耕民族であったことをその根拠としています。武智はこれを「原初生産性」と名付けました。
「原初生産性」とは、民族社会が成立した時点でその民族特有のパターンが決定され、その後も不変であるとする考え方です。このパターンは、身体動作だけでなく、言語やリズム感覚にも影響を与えるとされています。
日本人の場合、農耕(特に水田稲作)がその出発点であり、農耕的な身体動作が定着しました。農耕生産の基本姿勢は、全身の筋肉の緊張を中心とした「半身(単え身)」の姿勢が特徴的です。この「単え身」とは、身体をねじらず、全身が一枚の板のように動く姿勢を指します。
ナンバの歩行姿勢
ナンバの歩行姿勢は、農耕民族である日本人の労働動作に基づいています。歩行時にも「単え身」の基本姿勢を崩さず、右足が前に出るときは右肩も前に出るという動きが見られます。これは、農夫が鍬を手にして畑を耕す姿勢に似ています。
ただし、このような歩行は全身が左右交互に揺れるため、エネルギーの浪費が多いとされます。そのため、腰を入れて上体を安定させ、腰から下だけが前進するような形にすることで、効率的な動作が可能になります。この際、上体は腰の上に乗り、いわば運搬されるような形になります。
ナンバ歩きの利点と欠点
利点
- 腰部への負担軽減
回旋運動が少ないため、腰部への負担を軽減します。 - 体幹の活性化
ナンバ歩きは体幹を活性化させる動きと一致しており、身体全体の安定性を高めます。 - 足趾機能の向上
踵ではなく足先で設置する歩行スタイルのため、足趾(足の指)の機能を高めることができます。その結果、足先からふくらはぎが引き締まり、スマートな脚を作る効果が期待できます。 - 日本の伝統的履物との相性
下駄や草履、草鞋などの日本の伝統的な履物を履くことで、足趾をしっかりと使う歩行が可能になります。
欠点
- 慣れるまで時間がかかる
現代人にとってナンバ歩きは普段の歩行とは異なるため、慣れるまでに時間がかかります。 - 疲労感の増加
今まで使っていなかった筋肉を使うため、慣れるまでは逆に疲労感を強く感じることがあります。 - 臀部の形状変化
体幹のねじれ運動が減るため、股関節周囲の動きが変化し、中殿筋が主に働くようになります。その結果、臀部の形が丸形から四角形に変わり、平たくなる可能性があります。
日本人本来の身体機能を取り戻すために
ナンバ歩きや日本の伝統的履物(下駄・草履・草鞋)を取り入れることで、日本人本来の身体機能を発揮することが可能です。これらの履物は足趾をしっかりと使う歩行を促し、足部の機能を高める効果があります。
現代の生活では靴を履くことが一般的ですが、伝統的な履物やナンバ歩きを取り入れることで、健康的な身体作りや日本人特有の身体操作法を再発見することができるでしょう。
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